[読書感想文]為末大『諦める力』

2021年4月9日

為末大さんの著書『諦める力』の感想です。

この本を読むと、「あー諦めていいんだ」と気持ちがスーッと楽になります。

「諦める」と聞くと、「やめる」とか「逃げる」とネガティブワードを連想します。

しかし、本書は諦めて良いと説きます。

なぜ諦めてよいのかというと、

「諦める」ことは「明らめる」と言い、自分のことを知ることができるからだということです。

その上で、自分を知ったら選び直し、修正すればいい、そんなことがわかる本だと思います。

為末大(ためすえ だい )は、広島市佐伯区出身の男子元陸上競技選手。400mハードル日本記録保持者で、現在はスポーツコメンテーター・タレント・指導者などで活動中。株式会社R.project取締役。株式会社侍 代表取締役。

2001年世界陸上エドモントン大会・2005年世界陸上ヘルシンキ大会の男子400mハードルにおいて、世界陸上選手権の2大会で銅メダルを獲得。又オリンピックには、2000年シドニー・2004年アテネ・2008年北京と、3大会連続で出場した。身長170cm、体重66kg。

目的さえ諦めなければ、手段は変えてもいいのではないだろうか

為末さんは18歳で100m競技に限界を感じ、400mハードルへ転向しています。

理由は「勝ちやすい」と思ったから。

為末さんの目的は勝利すること、それを達成するために勝ちにくい100mをやめることにしたのです。

つまり、自分は何がしたいのか、何を達成したいのかとういう目的をしっかり持っていれば、目的に到達する手段を変えることは諦めではないということを教えてくれます。

裏を返せば、目的が定まっていないと選択は難しいということになるでしょう。

多くの人は、数ある選択肢の中で何を選ぶか迷うものです。

本書では、選択肢はトレードオフの関係になっていると言います。

Aという道を選ぶと①と②の目的に進めるが③の目的は達成できなくなる。Bを選べば、②と③は残るが①はだめになる。Cを選べば、①と③は残るが②はだめになる、といった関係です。

では①と②と③のうち自分にとってどれが一番大切なのか。

この選択を何度も繰り返して行くことで、目的は洗練され、より明確になっていきます。

「諦める」「やめる」は「選び直す」「修正する」

「諦める」を「逃げる」という意味に扱う傾向が日本では強い。

しかし、為末さんは「諦める」「やめる」は例えば「選び直す」「修正する」に置き換えれば、もっと前向きに捉えられるのではないかと言っています。

ある分野でうまくいかなかったとしても、「自分には合わなかっただけ」と思えれば、

その分野は諦めて、自分が合う分野に移動するだけと考えることができます。

とても腑におち、気持ちが楽になる考え方だなと感じました。

どの範囲の一番になるかは自分で決める

自分では「諦める」「やめる」に対する前向きな気持ちが理解できるようになっても、周りの人の考え方が気になってしまいます。

「上には上がいる」とか「井の中の蛙になるな」と言った周りの声が聞こえてきます。

そんな時は「自分はそこまでは求めていない。自分はここまででいい」と答えてよいのです。

自分がどこまで勝ちたいのか、その上で何を成し遂げたいのかを考えておくことで「自分はこれで満足だ」と言えることが大事だということなんですね。

ここでも、自分の軸を持っていることが気持ちを楽にするということがわかると思います。

まとめ 前向きに、諦める

本書全体を通して、どのような選択をしても自分を知る道につながっているというメッセージがあるように思います。

むしろ、道を諦めずに洗濯しないでいることは、立ち止まっていることなのかもしれません。

「諦める」ことは「逃げ」ではなく、自分の考えていること、本当に求めていることを明らかにすること。

そう頭を切り替えて、「前向きに、諦める」勇気をくれる、そんな一冊だと感じます。